餃子と国分寺崖線
2024
「餃子を媒介に、映像と現実が交差する中で自然な会話と共有体験が生まれた。」
立川市から渋谷区まで広がる国分寺崖線沿いを歩いていると、一匹の昼寝をしている猫を見かけた。その時、私が思ったのは、もしかすると今、同じ瞬間に 100匹の猫が崖線のどこかで寝ているかもしれない。それぞれの場所で同じことが同時に起こっているかもしれないということだ。こうした時間の同時性と場所の複数性を、今回の作品では「餃子」をモチーフにして表現した。それぞれの地域の文化を「具」として包み込んでいる餃子は独特の香りと味を持つ食べ物で、中国から始まり、世界中で愛される有名な食文化の一つ。そこでこの作品では国分寺産線の名物である「ほうれん草」を餃子の具にした。
国分寺崖線に沿う4箇所で「餃子を作ってシェアする」ということを行い、それを撮影した。そしてこれらの映像を、ムサビの7号館下のスペースに設置した4台のモニターに流した。更に、もう一台モニターを置き、この空間の裏でわたしが餃子を作っている様子をライブ配した。5台のモニターの映像は同時に流れているため、一つがライブ配であることには気が付きません。しかし、映像に映っている餃子が焼けるのと同時に、この空間に焼き餃子の匂いが広がってくる。映像を観ている人が「どこからこの匂いがしているのだろう」と思った時、画面の中でも餃子が出来上がった。そして私は出来上がった餃子を裏からこの空間に持っていき、来場者と餃子をシェアする。皆で食べたり、しゃべったりしながら、映像の中とこの場所で同じようなことが起きていることを体験できる新しい作品。





