ドウマオマオ
2025
「武蔵野美術大学 2024卒業制作」
「ドウマオマオ」は、「隠れる」と「見つける」を通じて、人間と空間、また人間と動物との新たなコミュニケーションを生み出した。
「ドウマオマオ」は、猫が隠れる習性に由来し、中国語では「かくれんぼ」を「猫」と書く。本作品は、猫の隠れる習性やかくれんぼの楽しさをテーマにしたインスタレーションである。
武蔵野美術大学美術館前の芝生は隠れる場所がなく、常に周囲から視線が集まる空間である。本作品はこの状況を変えるために、地面に擬態した「隠れる場」を作り出すことを目的としている。丘のような形状と人工的な四角い部屋を組み合わせた空間を設計し、「座る」「しゃがむ」「立つ」など、日常的な身体の動きを意識的な体験に変えることを目指している。入り口には黒いカーテンを設置し、その先には暗闇に包まれた空間が広がる。来場者は狭い通路を進み、屈む・しゃがむといった動作を通じて空間内部に入る設計である。壁面にはスタイロフォームを用いた造形や異なる素材を取り入れ、移動中に「触覚」を通じた体験を深める仕掛けが施されている。これにより、布団の隙間や机の下に潜り込んだ時のような、自宅で感じる「隠れる感覚」を思い起こさせる空間を演出する。さらに、空間内には外部を垣間見るための覗き穴が設けられ、来場者は覗き込むことで内外がつながる瞬間を体験できる。鏡を活用した設計により、自分の姿を偶然発見する驚きや新たな気づきも提供する。このような仕掛けを通じて、隠れることや見つけられることに関する心理的・身体的な体験を強調している。
また、「人間が入ることを想定しないボリューム」として、動物や猫の身体感覚を考慮した高さ 60cm程度の空間も設計している。これにより、武蔵美にいる猫たちが自然にここで寝たり過ごしたりすることを意図している。さらに、入り口にはリアルな猫のおもちゃを配置し、しっぽを少し外にはみ出させることで、隠れている猫の存在を暗示するデザインとしている。これにより、人間の好奇心を刺激し、覗き込む行動を誘発する。覗き込んだ先の空間には鏡を設置し、来場者が自分の姿を発見する仕掛けを組み込んでいる。この体験は、隠れることや発見されることに対する新たな視点や気づきを提供するものである。








