時代のフレーム
2025
SNSの普及により、誰もが「作品」を発信できる時代となった。個人の表現が容易になった一方で、「いいね」やアルゴリズムによって価値が決定される環境では、表現の「自由」と「不自由」の境界が曖昧になりつつある。
大学で学ぶアーティストとして私は、技術・研究・文脈を基盤に制作を行ってきたが、そのような文脈的価値はSNS上では可視化されにくく、“軽い投稿”として消費されることへの違和感を感じてきた。しかし同時に、SNSという場を否定するのではなく、むしろ現代の芸術の「現場」として肯定的に捉えたい。本作では、「芸術とは何か」「社会とどのように関わっているのか」という問いを、現代のフレーム構造そのものを使って再考することを目的としている。
本作を通して、観客は「見る/見られる」という構造の中で、自らの視点がどの“時代のフレーム”に属しているのかを意識するきっかけを得る。また、額縁やモニターといった異なる“可視化装置”を並列することで、アートの権威性と日常性の衝突を体験的に感じることができる。さらに、作品内のLIVE配信を通して、SNS時代の「記録」と「忘却」の循環構造を可視化し、観客自身が現代の“社会的記憶”の形成に参加するような感覚をもたらす。展示後にはSNS上の反応を再収集し、次の作品として再構成することで、リアルとオンラインを往復する「アートの生態系」を探る試みとなる。